経営者インタビュー:Polaris Infotech株式会社 代表取締役・東野誠氏

top_image_new

家電などを買ったら必ず付属してくる「取扱説明書」。
いわゆる「トリセツ」は、製品やサービスのリリースに必要となりますね。企業にとっては製品やサービスの使い方を「ラストワンマイル」の段階でエンドユーザーをフォローしてくれるものです。

わかりやすいトリセツはトリセツのみならず製品やサービスの評価も高くなります。
ユーザー目線に立ち、使用後の問い合わせ対応コストも抑えられるトリセツを制作するPolaris Infotech株式会社の代表取締役、東野誠氏に話を聞きました。

 

場所は変われど、マニュアル作り一筋17年

――御社の事業内容について教えてください。

「自社でマニュアルを作りたいけど担当者がいない、ノウハウや工数が確保できない企業様向けのマニュアルを制作する業務と、マニュアル制作を内製化したい企業様向けにマニュアルの作り方のセミナーをしています。
制作するマニュアルの種類は、製品やサービスに付属する取扱説明書や早わかりマニュアルなどのエンドユーザー向けのものから、整備のためのサービスマニュアル、代理店向けの説明資料などの企業内部で使用するものまで、幅広く受注しています。」

――東野さんがマニュアル制作に携わるようになるまでの経緯について教えてください。

「昔からものづくりが好きでプラモデルを作ったり、家電を分解したり、夏休みの自由研究でパチンコ台を作ったりしていた子供でした。高校に入ると化学の論理的でシステマチックな考え方が好きで、大学でもリチウム電池の機能性材料を扱う研究室に所属しました。大学卒業後に複写機メーカーのグループ企業でサービスマニュアル制作に従事したのが、マニュアルとの出会いです。

製品やサービスを使いこなすには、使い方を覚えたり、トラブルを解決する「体験」が必要です。だれでも最初は素人ですが、「体験」があると乗り越えられる。いつの時代でもどの業種でも「体験」を補う仕事(=マニュアル制作)はどんなに技術が進歩しても必要とされる仕事だと感じていました。

マニュアル制作という仕事には奥深さとビジネスでの可能性を感じていたので、テクニカルライターとして複数の制作会社やIT企業に所属し、家電、二輪/四輪自動車、建設機器、ゲーム機、医療機器など、BtoB、BtoC企業の製品やサービスに関する各種取扱説明書を17年間で200冊以上制作しました。制作したマニュアルはクライアント様には良い評価をいただいてきました。

 

higashino 17年間常にマニュアル制作に関わり続けてきた東野氏

 

――2014年に個人事業主として独立後、2015年7月に法人化されたということですが、法人化した理由は何でしょうか。

「企業の中で、マニュアルを外注に出す先は法人でなくてはいけないという社内ルールがあるところが割と多いのです。そういった企業からも仕事を請けることができる体制作りと、ちょうど創業促進補助金にも採択されたので、これは転機かなと思い法人化しました。

また、マニュアル制作に関わり始めた時代から、「ユーザー目線で、人の心が伝わるマニュアル」「(後でコストがかからない)問い合わせが少ないマニュアル」を作りたいと強く想っていましたが、成熟しきった組織のマニュアル制作会社では、それがさまざまなしがらみにより実現が難しいことが多いのです。業界での受賞歴もあり、様々な業界のマニュアルをすでに経験し、どんなマニュアルでも作れるようになったのも理由のひとつです。」

 

「わかりやすさ(TC)、扱いやすさ(IT)、役に立つ(IA)、よい体験(UX)」の融合こそがよいマニュアルのカギ

――御社にマニュアル制作を依頼することのメリットは何がありますか?

「弊社では『わかりやすさ(TC)、扱いやすさ(IT)、役に立つ(IA)、よい体験(UX)』の4つの要素を融合させたマニュアル制作を掲げています。

『TC』(テクニカルコミュニケーション)は『わかりやすく書く』ことです。これはテクニカルライターとしての基本になります。そこに『IT』の便利さや効率のよさを組み合わせます。『IA』(インフォメーションアーキテクチャ)は「目的まで最短でたどり着く」「ユーザーの探したいことに合わせる」ように情報を構成する、マニュアルでいうと目次構成を最適化することです。そこに『実際に製品やサービスに触れたユーザーが何をするか、何を考えるか』を考慮してマニュアルの基本設計から『UX』を反映します。

この4つを融合させることでよいマニュアルができると考えています。マニュアル制作会社は世の中に多くありますが、経験者や体制が整っていないと実現が難しいのです。その点では、これが弊社の強みになります」

 

image02 東野氏が制作したマニュアルの数々


――マニュアル制作のフローはどのようなものになるのでしょうか。


「企画段階からご提案する場合は、マニュアルの作り方、どのような活用法ができるかわからないクライアント様もおられますので、ターゲットユーザーは誰か、どういう使い方をして欲しいか、紙にするかWebにするか、クライアント様の想いがエンドユーザーに本当に最適化されているか、作る価値があるのか、といった企画の検証も行う場合もあります。

マニュアル制作を始めるのは製品がまだ企画段階のころが多いので、企画書や仕様書を見ながら制作することが多く、仕様をクライアント様と検証しながら目次構成や概算のページ数を見積もっていきます。そこで製品やサービスのバグや過不足を見つけてしまうこともよくあり、開発側にフィードバックすることもあります。」

――制作だけでなく、マニュアル制作のセミナーも行っているのですね。ノウハウを明かしてしまうことになりませんか?

「そうですね、大手の制作会社はやりませんね。それを敢えてやるのは、やはりマニュアル制作で困っている方が企業様の中にたくさんおられます。

セミナーに来ていただける人は、ノウハウを得るために来るというより、『マニュアルってどうやったら作れるの?』と漠然と思っているくらいの方が案外多いのですが、マニュアルの作り方をお話することで、『(自分たちでは)できなさそうなのでやっぱり作ってください』となることもあります。そこからお任せ頂いてもかまいませんし、企業様のマニュアルのクオリティーが上がれば、感謝されることが多いです。」

 

トリセツで、人の心をつなぎます

――最近の業務について教えてください。

「最近ではハードウェアとソフトウェアが融合した製品やサービスが多く、「IoT」(Internet of Things)のマニュアルにも対応しています。また、マンガを活用したマニュアルやプレゼンテーション資料の制作も行っています。

また、今まで名刺交換をさせていただいた方を中心にメーリングリストをお送りしていますが、そこで広報として「情報子分」という架空のキャラクターを使用しています。
詳しくはまだお伝えできませんが、今後は「情報子分」を「問合せ対応」に活用することを計画中です。」

――今後、提供を考えている新しいサービスはありますか?

「マニュアルを見積もり段階から一貫してクラウド上で作れるシステムの提供を予定しています。
今でもマニュアルのデータ自体をクラウド上で作れるソフトは他にたくさんあるのですが、一番重要な作業量を見積もる段階と目次構成を作る段階をクラウド上で行える決定的なソフトがないのです。

マニュアルの見積もりは様々な要素があり、傾向も一定していません。それが原因で見積もりを作ることも経験が必要で、検討時間もかかります。企業様の中では製品やサービスの予算確認に困られることが多いと思います。

――最後に、マニュアル制作に興味を持っている閲覧者へ向けてメッセージをお願いします。

「よいマニュアルはエンドユーザーの喜びを増やし、製品やサービスの印象も向上させます。また、エンドユーザーの理解度が増すことで、企業への問い合わせが減ります。
企業の従業員も対応要素が減るので、業務効率化にもつながります。

そして、弊社で制作するマニュアルは、営業コスト、問合せコストも減らすきっかけになります。
『ルール上、マニュアルを付けなくてはいけないからとりあえず付けている』ではもったいないです。マニュアルはそれ自体が売りになるものであり、制作コストはかかりますが、その後の営業コストや問い合わせコストを減らすことができるものなのです。」

――ありがとうございました。

東野氏の話をお聞きしていて、マニュアル制作に対する真摯な姿勢や、職人魂を強く感じることができました。わかりやすく扱いやすいマニュアルは、サービス・製品の提供企業とエンドユーザー、双方にとってプラスになることでしょう。