経営者インタビュー:株式会社テーブルクロス 代表取締役・城宝薫氏

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スマートフォンから飲食店の予約をすることで、発展途上国で暮らす子どもたちのために寄付をすることができるアプリ「テーブルクロス」。日本ではまだ珍しい、社会貢献と利益創出を両立させる、という考えに基づいて作られています。

このアプリを提供する株式会社テーブルクロスの代表取締役、現役大学生起業家・城宝薫氏に話を聞きました。

 

予約するだけで、誰かを幸せにできる

――御社が提供する無料スマートフォンアプリ「テーブルクロス」について教えてください。

「このアプリを使ってテーブルクロス加盟飲食店の予約をすると、一人分の予約につき、発展途上国の子ども一人分の給食が寄付される仕組みになっています。アプリのマイページには、今までに何人分の予約をしたかが表示されます。

エンドユーザーの金銭的負担はありません。気軽にチャリティーに参加してもらえます。

ユーザーが一人分の予約をするごとに、加盟飲食店側から180円の成功報酬をいただき、その一部を寄付するという広告モデルになっていますが、この金額も低く抑えることにこだわりました。

現在、多くのグルメサイトで導入されている広告モデルでは、飲食店側は来店客数に関係なく、毎月数万円の広告料を支払うことになります。以前に飲食店向け広告営業のアルバイトをしていたころから、その料金は『高い』と感じていました。そのため、低価格にこだわりました。

現在、当たり前だと思って月数万円の広告費を負担している飲食店の皆さんには、ぜひテーブルクロスという選択肢があることを知っていただきたいです」

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――途上国の子どもたちへ寄付を行うアプリを作ろう、と思ったきっかけは何だったのでしょうか。

「最初のきっかけは、7歳のころに家族でインドネシアに行ったことです。そこでは、私と同じくらいの年齢の子どもたちが、ストリートチルドレンとして暮らしていました。彼らが車の窓を拭きにくる姿を見て、同じくらいの年齢の子どもが、食べるために働かなくてはいけないことに衝撃を受けましたし、怖いとさえ感じました。その時のことがずっと印象深く心に残っていたのです。

大学生になり、飲食店向け広告営業のアルバイトを始めた際、はじめのうちは、ひたすら数字ばかりを追いかけていました。でもそんな毎日の中で、次第に『私が営業をかけて広告を売ることは、誰のためになっているのだろう』『数字のためだけではなくて、誰かを幸せにする仕事ができないだろうか』と考えるようになったのです。

私にとってその『誰か』とは、幼いころにインドネシアで出会った、ストリートチルドレンの子供たちでした」

 

 

多くの刺激を受けたアメリカ視察

――城宝さんは、小さいころから他人の幸せのために頑張る子どもだったのですか?

「そうでもないですよ。小学生のころは、スポーツや音楽をしていても、どちらかというと自分のために頑張ることの方が多かった気がします。感じ方が変わったのは、中学校で生徒会に入ったことがきっかけです。全校生徒のために生徒会の活動を頑張る中で、誰かから『ありがとう』と言われることの喜びを知りました」

――高校時代に親善大使としてアメリカを訪問されていますね。

「高校1年のときに選ばれて、出身地の千葉県浦安市から、姉妹都市の米フロリダ州オーランドに派遣されました。2週間くらいかけて、現地の学校での授業やNPOの活動を視察させていただきました。初めての一人旅だったので、もちろん不安はありましたが、新しい体験に対する期待の方が大きくてわくわくしていましたね」

――アメリカの学校での授業を視察して、どのように感じましたか?

「生徒の積極性が高くて衝撃を受けました。日本の授業では、先生が質問しても生徒がみんな黙っていることが珍しくありません。しかし、私が見学した小学校の授業では、生徒たちが一斉に手を挙げて、先生の質問に答えようとするんです。小学生で既にこれほどまでに違うのか、と愕然としました」

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――NPOの活動の視察はいかがでしたか?

「アメリカに行く前の私には、『NPO=ボランティア=利益を求めない』というイメージがあったので、視察させていただいたNPO団体で、団体に所属する地元のお母さんたちが、電卓を叩きながら利益の計算をしているのを見て、とても驚きました。

でも、メイン事業をできちんと利益を出して、さらにその事業自体が社会貢献にもなっているのが、私にとってすごく刺激的な構図でした。

 

日本では、企業がメインの事業で出した利益の一部を社会貢献活動に充てることがよいとされ、社会貢献活動自体は利益を求めないものであることがほとんどです。

そうではなく、メインの事業の運営・拡大が社会貢献につながる、というモデルが日本にも必要なのではないかと思いました。

2015年に入ってから、その考え方にぴったり当てはまる、CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)という言葉を知りました。利益の創造と社会貢献が両立する文化が日本には必要だと思いますし、テーブルクロス事業の成功によって、その文化が浸透した社会に一歩近付くのではないかと思っています」

 

新しい文化を創造したい

――アプリ「テーブルクロス」は、CSVの考え方に基づいて作られているのですね。

「そうです。日本では、まだまだチャリティー団体が利益を出すことへの抵抗感が大きく、批判も少なくありません。『無償でやるべき活動で利益を出すとは何事だ』『金目当てなのではないか』といったものです。

しかし、海外ではチャリティー活動で利益を上げ、そこから活動費を捻出するのは一般的なことです。

私は、少しずつ日本のチャリティーに対する考えを変え、利益の創出と社会貢献を同時に行うという考え方を根付かせていきたいと思っています。

このテーブルクロス事業が成功すれば、飲食業以外にホテルやネイルの予約など、さまざまな業界で、似たようなサービスを行う企業が出てくるかもしれません。それで社会が変わっていくならば構わないと思っています。

むしろ、テーブルクロスがお手本となって、社会を変えていかなくてはいけません」

――テーブルクロス事業の今後の展望についてお聞かせください。

「大手グルメサイトと肩を並べるようなサービスに育てることが、第一目標ですね。数値としての最終目標は、栄養失調によって5歳未満で亡くなってしまう発展途上国の子どもたちを救うことができる規模です。具体的にいうと、掲載店舗数70万店舗・ユーザー数120万人です。

でも、あくまでこの事業の目的は、その先のチャリティー文化を日本に浸透させることです。もっと気軽に、もっと多くの人がチャリティーに参加できる社会を実現したいと思っています」

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――最後に、閲覧者の方々へメッセージをどうぞ。

「食べることは活力につながります。たくさん食べ、たくさん勉強し、たくさん交流することで、夢に向かって前向きに生きていく力がみなぎってくるのだと思います。

一人でも多くの子ども達がその力を得ることができるように。

そう思ってこの事業を始めました。

参画いただいた企業各社が、このアプリを主体的に拡散してくださることで、それ自体が社会貢献活動にもなります。そうした各企業の社会貢献活動に対する支援も、積極的に行っていく方針です」

――ありがとうございました。

 

「学生起業家」という言葉の響きとは裏腹に、実際にお会いした城宝氏は明るく元気なごく普通の大学生という印象を受けました。しかし、途上国の子ども達について語るその眼差しには、「“誰か”のためになることをしたい」という確固たる意志が感じられました。