条文の順序と契約解除条項|失敗しない契約書の書き方①

前回の記事で説明した通り、契約書の作成にあたっては「その契約で、当事者にどのような権利が発生し、どのような義務を負うのか」を明確に規定することが肝要です。

では実際に、契約書はどのように作成すればいいのでしょうか。

今回は契約書条文の作成方法について、例文を交えながら説明します。


契約書条文の順序

条文の順序について規定はありませんが、ここでは実際の契約書作成でよく見られる条文の作成方法を二つご紹介します。

時系列に規定する方法

ひとつ目の方法は、契約で想定されている作業のフローに沿って規定していく方法です。例えば、物の売買契約であれば、以下のように業務のフローに沿って条文を起こしていきます。

  1. ①物の注文
  2. ②物の納品
  3. ③納品された物の検品
  4. ④対価の請求
  5. ⑤対価の支払

重要な条項から規定する方法

もうひとつの方法は、契約の重要な部分から規定していく方法です。当事者の役割や契約における本質的な事項から条項を起こしていきます。

例えば、複数の当事者が互いに出資して会社を設立して経営する合弁契約であれば、設立する会社のガバナンスや出資比率、当事者からの出向者等、合弁会社の運営や当事者の関わり方のような合弁契約における重要な事項について、契約書の前半に規定していきます。

これら2つの方法のように、前半部分で業務フローや契約の本質事項などの主要条項を規定した後、後半部分で解除・損害賠償・秘密保持等の一般条項を規定します。

契約解除条項を規定する

相手方に契約違反があった場合、他方当事者は契約を解除することができます。

相手方が、契約で負担している債務の履行をしないこと、つまり契約で定められた事項に違反することを債務不履行といいます。また民法では、債務不履行の場合には契約を解除できるとされています(民法541条、543条)。

契約を解除すると、元々契約が無かったことになります。これを解除の遡及効(そきゅうこう)といいます。

そのため、売買契約を解除した場合、買ったものは返さなくてはなりませんし、受け取った代金は返金しなくてはなりません。ただし、賃貸借契約のように契約の効果が継続する契約(継続的契約)には、解除の遡及効がありません。

例えば、建物の賃貸借契約は継続的契約に当たります。なぜならば、解除前の建物を借りたことによる効用を、解除後に返還することは不可能だからです。解除の遡及効がないので、解除前に支払っていた賃料の返還を求めることもできません。

ビジネスの場面で良く利用されている継続的契約としては、賃貸借契約のほかに、システム開発委託契約や営業委託契約のような業務委託契約があります。

契約解除条項を設ける理由

前述のとおり、相手方の債務不履行の場合に契約を解除できることは民法に定められているため、契約書に解除に関する規定がなくても契約を解除することはできます。しかしながら、契約書では解除に関する規定を設けるのが一般的です。

契約書に解除の規定がない場合、契約を解除できるのは相手方に債務不履行があった場合だけです。

相手方の財務状態に不安が生じた場合や、相手方が反社会的勢力と繋がりがあることが判明した場合など、相手方に債務不履行は無いが契約を解除したい場合にも、契約を解除することはできません。

そのため、財務状態に不安がある中で取引を継続しなければなりませんし、反社会的勢力と取引を続けて会社の評判をリスクに晒し続けなくてはならないことになってしまいます。

そこで、破産や民事再生の申立て等、契約を継続することに不安が生じた場合には契約を解除できる旨を契約書において規定することになります。

また、契約書において相手方が反社会的勢力と繋がりがないことを保証させ、それに反する事実が判明したときは契約を解除できるように規定しておきます。

これらは、民法で定められた契約の解除事由を拡張する条項です。

契約解除条項の例

以下に、契約解除条項の例を記載します。相手方の経営状況に不安が生じた場合に契約解除できる旨や、反社会的勢力との繋がりがないことを証明・保証させる旨を明記します。

第〇〇条(契約の解除)

  1. 1. 当事者の一方が次の各号のいずれかに該当した場合には、他方当事者は、何らの催告を要することなく、本契約を直ちに解除することができる。
    1. (1) 自ら振り出した手形または小切手が不渡り処分を受ける等、支払停止の状態に至った場合。
    2. (2) 差押え、仮差押え、仮処分、競売または強制執行の申し立てを受けた場合。
    3. (3) 破産手続開始、民事再生手続開始または会社更生手続開始の申し立てを受け、または自らこれらの申し立てをした場合。
    4. (4) その他当事者間の信頼関係を著しく損ない、本契約を継続しがたい重大な事由が発生した場合。

  2. 2. 本条の定めに基づいて本契約を解除し、そのことによって損害が生じた場合、解除した当事者は、相手方にその損害の賠償を請求することができるものとする。

第〇〇条(反社会的勢力の排除)

  1. 1.各当事者は、次の各号のいずれにも該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを表明し、保証する。
    1. (1)自らまたは自らの役員が、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標ぼうゴロまたは特殊知能暴力集団等その他これらに準じる者(以下、総称して「暴力団員等」という)であること。
    2. (2)暴力団員等が経営を支配していると認められる関係を有すること。
    3. (3)暴力団員等が経営に実質的に関与していると認められる関係を有すること。
    4. (4)自らもしくは第三者の不正の利益を図る目的または第三者に損害を加える目的をもってするなど、暴力団員等を利用していると認められる関係を有すること。
    5. (5)暴力団員等に対して資金等を提供し、または便宜を供与するなどの関与をしていると認められる関係を有すること。
    6. (6)自らの役員または自らの経営に実質的に関与している者が暴力団員等と社会的に非難されるべき関係を有すること。
  2. 2. 各当事者は、他方当事者が前項に違反した場合は、本契約を解除することができるものとし、他方当事者が被った損害の賠償を請求できるものとする。

まとめ

一度結んだ契約を解除する場合、相手方に債務不履行が生じないと、原則解約できません。しかしながら、契約書において解約条項を設けておくことによって、契約を続けることで起こりうるリスクを回避することができます。

契約解除条項を設けたら、次は損害賠償条項です。次回は損害賠償条項について例文を交えてご説明します。

参考記事:もう一度確認しよう!ビジネスにおける契約書の必要性について
参考記事:条文の順序と契約解除条項|失敗しない契約書の書き方②

早稲田リーガルコモンズ法律事務所 弁護士 佐藤亮
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