必ず盛り込んでおきたい損害賠償請求の規定とは? | 失敗しない契約書の書き方②

前回の記事では、一般的によく用いられる代表的な契約書の条文作成方法を2つ紹介しました。また、契約書には解約条項を設けておく必要があることも説明しました。

契約解除の条項を設けておくことで、相手方の財務状態に不安が生じた場合や反社会的勢力との繋がりが判明した場合などでも、契約解除ができるようになります。契約を結んだことによって発生する将来のリスク、例えば相手方の信用不安や反社会的勢力とのつながりによる風評被害などを回避することができるのです。

契約解除条項を設けたら、次は損害賠償請求の条項を設けます。


民法上の損害賠償範囲は「通常生ずべき損害」

解除と同様に、損害賠償請求も債務不履行の効果として民法に規定されています(民法415条)。よって、契約書に別段の規定がなくても請求することはできます。

しかしながら、民法上、請求できる損害賠償の範囲も規定されており(民法416条)、契約書に規定がない限りは、この範囲を超える金額を請求することはできません。

民法では、請求できる損害賠償の範囲は当該債務不履行から「通常生ずべき損害」の範囲が原則です。

弁護士費用は損害賠償条項に盛り込む

損害賠償請求をするにあたって請求者側が負担した弁護士費用は、原則として通常生ずべき損害には含まれません。そのため、実務上、債務不履行に基づく損害賠償請求において弁護士費用の賠償が認められることはないと考えておくべきです。

よって、損害賠償請求にかかった弁護士費用を請求できる旨を、契約書にしっかりと明記しておく必要があります。

損害賠償条項で差止請求も設ける

契約解除や損害賠償請求が最も一般的ですが、契約書において、債務不履行の場合の差止請求被害拡大の防止措置を採るべきこと等を規定することもあります。

例えば、販売店契約(ディストリビューション契約)において、売主のノウハウが同業他社に流出するのを防止するために、販売店に対して、売主の同業他社製品を取り扱ってはならないという義務を課す場合があります。

販売店がこの義務に違反した場合(債務不履行)、売主としては、事後の損害賠償請求だけではなく、そのような違反行為を止めさせたいところです。

債務不履行の場合に差止請求をすることができる旨を契約書で定めておくことで、そのような違反において差止めができることを明確にすることができます。

損害賠償条項の例

以下の例のように、損害賠償条項には、賠償請求負担する弁護士費用を明記すると同時に、契約違反時に違反行為の差止ができるよう明記しておきましょう。

第〇〇条(損害賠償等)
  1. 1. 両当事者は、相手方に対して、相手方が本契約の義務に違反したことに起因して生じた損害(賠償請求にあたり負担した弁護士費用を含みこれに限らない。)の賠償を求めることができる。
  2. 2. 両当事者は、相手方が本契約に違反する行為を行っていることを発見した場合は、相手方に対し、当該違反行為の差止めを求めることができる。

契約締結前にも責任は生じる

契約が締結されることによってはじめて、当事者はその合意内容に拘束されます。

すなわち、契約が締結されるまでは、合意内容は最終確定していません。よって損害賠償その他、合意内容を履行しないこと(債務不履行)による責任も生じないのが原則です。

しかしながら、契約交渉の段階における一方当事者の言動に基づいて、他方当事者が費用をかけている場合があります。このとき、契約が不当に破棄されてしまえば契約のためにかけた費用が無駄になってしまいます。

このように、契約交渉の段階で、一方当事者の言動が他方当事者に対して契約締結に対する強い信頼を与えた場合には、当該信頼を与えた当事者は、その信頼を裏切らないように誠実に行動する義務を負います

そのため、信頼を裏切って契約締結に至らなかった場合には、契約締結にあたり相手方が支出した費用等の損害を賠償する責任が生じることになります。

契約締結に至らなかったことによる損害を請求するためには、一方当事者の行為や言動に、他方当事者に契約締結への期待を持たせるものがあったことを示す必要があります。

まとめ

契約書を作成するということは、当事者お互いがやるべきこと、得られるもの、できることとできないことを明確にさせることができます。

同時に、将来起こりうるリスクを事前に洗い出して、当事者双方がリスクに対してどう対応するか検討することで、お互いの責任を明確にすることもできます。

このように契約書は、会社の社会的信用保証すると同時に、事業を進めていく上で生じるリスクを最小にするためにも必要不可欠なビジネスツールなのです。

また、契約書を作成するということは、必ず相手方がいることを忘れてはいけません。

自分たちが有利になるような条項だけを考えるのではなく、当事者双方の利益が最大になる契約になるよう、締結前から社会的責任をもって契約書作成に望みたいところです。

参考記事:もう一度確認しよう!ビジネスにおける契約書の必要性について
参考記事:条文の順序と契約解除条項|失敗しない契約書の書き方①

早稲田リーガルコモンズ法律事務所  弁護士 佐藤亮
資料請求