人件費の戦略的分配でサービス残業を回避する方法4選

近年、サービス残業として働いた分の賃金を支払うよう訴訟を起こされる企業が増えています。

多くの経営者は、社員から搾取しようなど悪い考えを持ってはいません。しかし、お金も人も少なく資源が限られた中小企業では、経営上やむを得ずサービス残業をさせているケースも多くみられます。

また、残業代込みの賃金を支払っていたつもりが、法的には残業代が未払いになっているなど、経営者が正しく労働基準法を解釈していないために、サービス残業が発生していることも多々あります。

サービス残業代の請求訴訟は、人件費を戦略的に配分することで、ある程度事前に対策することができます。特に経営体力の小さい中小企業では人件費が限られていますので、リソースを戦略的に使って将来のサービス残業代請求訴訟に備えたいものです。

そこで今回は、人件費を戦略的に配分することによってサービス残業を回避する方法をご紹介したいと思います。


1. ボーナスの原資を取り崩し、サービス残業代に充てる

日本において、ボーナスは支払われて当然という認識になっています。しかし法的にボーナスは、使用者が従業員に対して任意恩恵的に支払うものとされています。

ボーナスを必ず支払うことが就業規則等に明記されていなければ、会社はボーナスを支払う義務はありません。毎月支払う給与とは異なるのです。

また、ボーナスを支払う場合も、特段の労使の合意がない限り、支払い金額は使用者の裁量に委ねられています。

しかし実際には、サービス残業が発生しているにも関わらず、ボーナスについてはきっちり支払っているという会社が多くあります。見方を変えると、サービス残業分をボーナスとして後払いしているともいえます。

このような企業は、ボーナスとして給与を後回しで払うのではなく、まずは残業代を適正に支払い、サービス残業を回避するべきといえるでしょう。

2. サービス残業ではなく固定残業とする

経営的な体力の問題で、どうしても基本給しか支払うことができず、結果サービス残業にならざるを得ない会社はどうするべきでしょうか。

社員との合意が前提となりますが、従来の基本給を「基本給」と「固定残業」に分けることで、サービス残業を回避することも有効な手段です。

例えば、従来の基本給が30万円であれば、基本給22万円と固定残業代8万円に分割するイメージです。

法的には、月の残業時間が45時間程度までは追加で残業代を支払わなくても、サービス残業は発生しないことになります。

3. 年俸に固定残業代を含ませてサービス残業を回避する

ベンチャー企業など、成果主義を重視する会社では年俸制を採用しています。「年俸制だから残業代は支払っていない」と口にする経営者がいますが、完全に法律を誤解しているといえます。

年俸制を採用すれば残業代を支払わなくても良いなどとは、どの法律にも書かれていません。すなわち、年俸制の会社でも時間外労働に給与を支払わなければ、サービス残業をさせていることとイコールなのです。

「年俸制は残業代を支払わなくてよい」と誤解したままでは、将来社員からサービス残業代を請求されかねません。

そこで年俸制を採用している会社においても、年俸の一部を固定残業代にしてサービス残業を回避しておくと良いでしょう。例えば、年俸が1,000万円であれば、基本給は800万円で200万円は残業代とするイメージです。

4. 役職給に固定残業代を含ませてサービス残業を回避する

労働基準法における「管理監督者」に対しては、時間外労働に関する規定が適用されていません。しかし、労働基準法でいう「管理監督者」は、世の中で一般的に用いられている「管理職」よりも限定的に用いられていますので注意が必要です。

一般的な企業では、プレイングマネージャーである課長や、部下を持たない課長補佐や担当課長なども「管理職」として扱われ、時間外労働に対して給与が支払われていないこともあります。

しかしながら、労働基準法上の管理監督者と認められるためには、「経営会議への参画」「人事権の保有」「出退勤の自由」など、厳しい要件をクリアすることが必要です。要件に当てはまるのは、執行役員や部長クラスまでといえます。

つまり、一般的な企業の課長以下の管理職は労働基準法における「管理監督者」に当てはまりませんので、「自分は名ばかり管理職だ」ということで、将来サービス残業訴訟を起こされるリスクがあるのです。

課長以下の管理職のサービス残業を回避する方法としては、管理職に支払っている「役職手当」に固定残業代の役割を持たせることが有効です。

具体的には、就業規則の賃金規程において、役職手当についての規定を設けておきます。例えば、「役職手当は、その役責を果たすために必要と考えられる時間外手当をあらかじめ定額で支払うものである」というような定め方が考えられます。

まとめ

追加の資金負担をしなくとも、賃金の配分の仕方を工夫したり、賃金規程を見直したりしておくことで、多くのサービス残業代の請求訴訟は回避することができます。

しかし、今回ご紹介した対策で、全てのサービス残業を回避できるとはいえません。サービス残業が発生しているかどうかの判断は専門的な知識も必要です。

弁護士社会保険労務士は、労働基準法に基づいた診断や改善策についてアドバイスをすることができます。将来、社員からサービス残業代を請求されないように、必要に応じて専門家を活用してみてはいかがでしょうか。

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