もう一度確認しよう!ビジネスにおける契約書の必要性について

契約は、お互いの権利と義務について当事者間の合意があれば、契約書がなくても成立します。例えば売買契約の場合、何をいくらで買うかについての合意があれば、契約書がなくても売買契約は成立します。

日常生活において、皆さんがコンビニ等でパンを買うときに、いちいち売買契約書を作ることはありません。しかし、レジでモノを購入するごとに売買契約は成立しているのです。

日常生活では、契約書を作成する機会は少ないですが、ビジネスの場面ではそうはいきません。目まぐるしく変化するビジネス環境の中で、契約書を作成せずに事業を進めていくことはリスクが高すぎるといえます。

そこで、改めてビジネスにおける契約書の必要性と、契約書作成にあたっての取り組み方についてお話ししたいと思います。


契約書は立派なビジネスツール

冒頭でも述べた通り、どんな予想外の事態が生じるか分からない中で、口頭の合意だけで何百万円、何千万円の物やサービスを購入したり、業務を委託したりすることはリスクが高すぎます。

購入した物やサービスに重大な欠陥があった場合のリスク、当事者間の合意内容に齟齬があって「言った」「言わない」の水掛け論になってしまうリスクなど、口頭の合意でビジネスを進めることにより様々なリスクが生じます。

契約書は、このようなリスクを事前に洗い出して、採るべきリスク、回避すべきリスク等を当事者双方が検討して、合意内容を明確にするために必要不可欠なビジネスツールです。

契約書の作成は会社の社会的信用を守る

ビジネスを進めていく上で、会社の社会的信用は極めて重要です。契約書を作成するということは、当事者お互いがやるべきこと、得られるもの、できること、できないことが明確になります。

すなわち契約書には、相手方が過度な期待を持つことを防止し、会社の社会的信用を守るという効果もあるのです。

契約書を作成しなければならない契約

契約書がないと契約自体が成立しない場合

前述のとおり、契約書がなくても契約は成立するのが原則です。しかしながら、契約書がなければ成立しない契約の類型があります。

例えば、第三者の債務を保証する保証契約は、保証契約書を作成しなければ保証契約は無効であると民法で定めています。このような契約を要式契約といいます。

保証契約は、書面でしなければ、その効果を生じない

出典:民法446条2項


要式契約である保証契約は、契約書を作成しなければ保証の効果自体が生じないのです。

契約書がないと、契約は成立するが罰則等がある場合

一方、契約書がなくても契約の効果は生じるものの、契約書を作成しないと様々な罰則がある契約の類型もあります。

建築工事請負契約や農地賃貸借契約は、建設業法と農地法に基づき、契約書の作成が義務付けられています。これらの契約は、契約書がなくても有効に成立するものの契約書作成が義務付けられているという類型です。

契約書作成に取り組む姿勢

契約書作成にあたって重要なことは、合意内容を明確にすることです。「いつ、どこで、誰が、何をするのか」を意識して、漏れや矛盾のないように記載しましょう。

契約書は、法律の条文のような特有の言い回しで作成されることが一般的です。しかしながら、言い回しにこだわるよりも、平易な表現で合意の内容について誤解を生まないよう正確に記述することを重視すべきです。

難しい表現を使っている割に、何を定めているのか良くわからない契約書も散見されます。これでは、お互いの権利義務を明確にすることができず、契約書を作成する意味がありません。

契約書作成にあたっては、「その契約で、当事者にどのような権利が発生し、どのような義務を負うのか」を第一に考えるべきです。このことを紛れなく明確に規定する姿勢を常に持っておくことが肝要です。

あいまいな表現で契約書を作成するのは要注意

契約書の表現によって、法的な効果が変わってしまうことには注意が必要です。

例えば、「相手方は〇〇しなければならない」と定めれば、〇〇をすることが契約上の義務であることは明らかです。この場合、相手方が違反(〇〇を履行しなかった)すれば、損害賠償請求や契約の解除をすることができます。

これに対し、「相手方は〇〇するよう努める」という定めであれば、〇〇することは努力義務に留まります。努力義務でしかない以上、相手方が〇〇しなかった場合に、契約違反として損害賠償請求や解除を請求することは難しくなります。

まとめ

契約書の作成というと、どうしても独特の言い回しや形式ばった表現などに固執し、肝心の内容が二の次になってしまいがちです。

契約書は、自社の社会的信用を守る重要なビジネスツールです。平易な表現でも、当事者同時が誤解のないよう、主語や述語を意識して正確に作成しましょう

次回は、実際の契約書作成について手順を追ってご説明したいと思います。

参考記事:条文の順序と契約解除条項|失敗しない契約書の書き方①
参考記事:条文の順序と契約解除条項|失敗しない契約書の書き方②

早稲田リーガルコモンズ法律事務所 弁護士 佐藤亮
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