商標権が侵害されたら?有効な対処法3選

中小企業も知っておきたい商標 入門編その3


前回の記事では、商標登録審査の際に重要な判断材料となる「類似性」を中心に、登録できない商標についてご説明しました。

参考記事:類似商標は要注意!登録できない商標と類似性の判断基準

自社商品の商品名やサービス名で商標を取得しておくことで、競合他社が消費者を誤解させることを目的として、似たような名前で類似商品を発売することを防止することができます。

では自社の商標が第三者に無断で利用されていた場合、どのような対応が採れるでしょうか。

今回は商標権が侵害された場合にとるべきアクションについてご説明します。

まずは商標権侵害の警告書を送る

自社の商標権が侵害されていることを見つけたら、まずは侵害者に対して警告書を送付するのが通常です。

侵害者は、意図せずに自社商標を侵害している可能性もあります。法に訴える前に、警告書によって商標の使用中止を求めましょう。

商標権侵害で有効な3つのアクション

侵害者に対して警告書を送付したにも関わらず、それでも中止しないときは、商標法に基づくアクションを検討することになります。

商標権侵害の場合に、商標法では3つのアクションを認めています。

  1. 信用回復措置請求(商標法39条、特許法106条)
  2. 差止請求(商標法36条)
  3. 損害賠償請求(商標法38条、民法709条)

①信用回復措置請求する

商標権者の業務上の信用を害した者に対しては、信用を回復するための信用回復措置を請求することができます(商標法第39条、特許法第106条)。

信用回復措置請求の典型例は謝罪広告の掲載です。例えば、侵害者が類似の粗悪品をつくり販売したような場合、新聞や業界紙に謝罪広告を掲載するように求めることが可能です。

しかし、実務上では信用回復措置請求よりも、次に説明する差止請求と損害賠償請求を利用することが一般的です。侵害商品の販売を差止する請求から検討しましょう。実際に商標を侵害されたことによって、損害を受けているのであれば賠償請求も検討します。

②差止請求する

商標権を侵害する者や侵害する恐れがある者に対して、侵害の停止または予防を請求することができます。つまり実際に商標権侵害があった場合だけではなく、商標権侵害の恐れがある場合でも差止請求をすることができるのです。

また、侵害者側に商標権を侵害する意図がなく、使ってみたら商標権を侵害していた場合であっても、商標権者は差止請求をすることができます。差止請求をする場合は、侵害者に故意・過失があるかどうかを考慮する必要はありません

差止請求は、侵害行為を組成した物(商品、カタログ等)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却等、侵害の予防に必要な行為を請求することができます(商標36条2項)。

③損害賠償請求をする

商標権者は、故意又は過失により商標権を侵害した第三者に対して、侵害により被った損害の賠償を請求できます(民法709条)。

差止請求とは異なり、損害賠償請求をするためには、侵害者の故意又は過失によって商標権が侵害されていることが必要です。民法では、侵害者が商標権を侵害していることを、損害賠償を請求する者(商標権者)が立証しなければなりません。

しかし商標法では、侵害者の過失については推定規定を置いています(商標法39条、特許法103条)。そのため、商標権侵害があった場合には、侵害者には過失があったことが推定されるため、商標権者は侵害者の過失を立証する必要がありません。商標法は、このように商標権者の立証負担を軽くし、損害賠償請求をしやすくしています。

商標権侵害で損害賠償額を算出する3つの方法

商標権の侵害によって被った損害額は、民法の原則では請求者(商標権者)が立証しなければなりません。しかし実際には、第三者が商標権を侵害したことにより、商標権者にどのくらいの損害が生じたのかを立証するのは困難です。

そこで商標法は、損害額の立証も簡単にしています。商標権者は以下の3つのいずれかを選択して、商標権者が被った損害額を推定できると定めています。

i.「侵害者が販売した該当商品の個数」×「商標権者が商品1個あたりから得る利益」

商標法は、侵害品の販売数量に、商標権者の商品1個あたりの利益を掛けて、損害を算出することを認めています。ただし「商標権者の使用の能力に応じた額を超えない限度」と規定がありますので、商標権者の供給可能限度を超える数量については推定される損害から外されます。

ii. 侵害者が商標権侵害により得た利益の総額

商標権の侵害行為よって侵害者が得た利益を、商標権者が被った損害と推定することもできます。

iii. 商標権のライセンス料相当額

商標権を侵害者に対してライセンスした場合のライセンス料相当額の金銭を、自社が受けた損害として賠償請求することもできます。

まとめ

ここまで見てきたように、商標には、自社の商品やサービスの品質やイメージを消費者に伝える役割があります。そのため、自社の商標が侵害されているということは、利益の流出だけが問題ではありません。自社のブランドが傷つけられたり、誤ったイメージを市場に植え付けられたりする可能性もあります。

商標が有する機能など本質的なことを理解して、自社の商標が侵害されていないかどうか、経営者であれば常に市場に目を光らせておきたいものです。

早稲田リーガルコモンズ法律事務所
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